もみあげの造形美は、現代劇の枠を飛び越えてグローバルな映像美へと昇華している。Netflixで世界的大ヒットを記録した『忍びの家 House of Ninjas』は、日本映画産業が培ってきた伝統技術と現代的なリアリズムが見事に融合した好例だ。忍びとして生きる女性キャスト陣のヘアスタイルには、激しいアクションでも乱れず、かつ静寂の中で冷徹な美しさを放つタイトな耳周りの処理が施されている。
古くから日本の時代劇において、鬢(びん)やもみあげの毛流れは身分や心情を表す重要な記号だった。その伝統的な美意識を現代のアクションサスペンスへ大胆に翻訳したことで、横顔の陰影がキャラクターの葛藤を雄弁に物語る。配信画面のハイコントラストなライティングのなかで、一筋の毛先が画面全体の緊張感を支配しているのだ。