最新の現地調査によって、全国各地に残る軽便鉄道の遺構と動態保存活動を取り巻くリアルな実情が見えてきた。最大の障壁となっているのは、部品の調達難と保存メンバーの高齢化だ。100年近く前の特殊狭軌用パーツは当然ながら既製品が存在せず、特殊な真鍮継手やボイラー部品は、設計図をもとに町工場でワンオフ削り出しを行うケースも珍しくない。
しかし、悲観的な側面ばかりではない。現場では確かな世代交代の芽が育ちつつある。デジタル世代の若手エンジニアや学生ボランティアがSNSを通じて保存活動に合流し、3Dプリンターを用いた絶版パーツの型取りや、クラウドファンディングを活用した修繕資金の調達など、新たな手法を次々と導入しているのだ。
かつて地域を支えた地方鉄道交通産業の遺産を、行政と民間有志が一体となって「生きた教材」として守り抜く。単なる静態保存から、動く姿を見せる動態保存への転換が、各地で保存会の活動基盤を力強くアップデートしている。