看護師のキャリアを語る上で避けて通れないのが、「30代以降の昇給停止」と「地域格差」という2つの分水嶺です。若手時代は他業種を圧倒する給与水準を誇りながら、キャリアを重ねるにつれて周囲との差が縮まり、やがて逆転を許してしまう現象が起きています。
看護師平均年収年代別の推移を見ると明らかなように、20代から40代にかけての年収の伸び幅は100万円強程度しかありません。一般企業の大卒社員が役職付きとなる30代半ばから後半にかけて年収600万〜800万円へと急カーブを描くのに対し、看護師の給料カーブは非常に平坦です。ここに、世間が抱く「高給」の幻想と現場の疲弊のギャップが存在します。
さらに立ちはだかるのが看護師年収600万円の壁です。一般病棟で現場のスタッフナースとして勤務し続ける限り、夜勤を月5回以上こなし残業を限界まで重ねても、年収550万円前後で事実上の天井を迎えます。年収600万円を超えるには、「病棟師長などの管理職に就任する」「大規模大学病院・国公立病院で勤続15〜20年以上を達成する」「訪問看護ステーションの管理者になる」といった限られたルートしか用意されていません。
地域差も深刻です。看護師都道府県別年収ランキングを検証すると、トップクラスの東京都、神奈川県、大阪府、愛知県などの大都市圏では平均年収が540万〜570万円に達する一方、九州・四国・東北の一部地域では430万〜460万円程度にとどまり、同一資格でありながら年間100万円以上の地域格差が生じています。大都市圏の手厚い「地域手当」や病院間の採用競争が年収を押し上げる一方、地方では病院の経営体力が乏しく、賃金の上限が低く抑えられているのが現実です。