いまや観念論に逃げ込む余白は急速に消えつつある。国際政治学の専門家たちが指摘するのは、核保有国に囲まれた日本の地政学的脆弱性だ。隣国が核兵器の実戦配備を加速させ、通常兵器の近代化を進める中、「持たず、作らず、持ち込ませず」という宣言だけで国家の主権と抑止力を担保できるのかという問いは、極めて切実な響きを帯びている。
こうした力学の変化は、国内の防衛・安全保障産業にも大きな地殻変動を促している。スタンド・オフ防衛能力の整備、反撃能力の保有、さらには統合防空ミサイル防衛(IAMD)への投資拡大など、非核の枠組みを維持しながらも抑止の破綻を防ぐための通常戦力強化が急ピッチで進行中だ。核の議論を忌避してきたツケを、通常戦力への巨額投資と防衛産業基盤の強化によって埋め合わせようとしているのが実態である。