文部科学省が定める幼稚園教育要領において、「表現」の領域は子どもの感性や情緒の発達を促す重要な柱と位置づけられている。朝の会でクラス全員が声を揃えて歌う行為は、単なる時間割の消化ではない。個々の家庭環境から集団生活の場へと移る移行期において、音楽を介して所属感と安心感を得るための決定的な儀式なのだ。
音程が外れても、伴奏が一瞬止まっても問題はない。歌う楽しさを教員自らが体現している姿こそが、幼児にとっての最大の学びとなる。楽譜の正確性に固執しすぎて緊張した空気が漂えば、子どもたちはそれを敏感に察知して萎縮してしまう。大らかな受容の場を作るための道具として音楽を捉え直したとき、目の前にある譜面の捉え方も根本から変わるはずだ。