写真集のタイトルにもなったアメリカ・ニューメキシコ州の古都サンタフェ。なぜこの場所がロケーションとして選ばれたのでしょうか。宮沢りえとサンタフェという組み合わせの経緯をまとめると、写真家・篠山紀信氏の極めて計算された美学に行き当たります。
サンタフェは、画家ジョージア・オキーフが晩年を過ごしたことでも知られる、赤茶色のアドビ(日干しレンガ)建築が連なる乾いた砂漠の街です。篠山氏が求めたのは、日本の湿っぽいエロティシズムの文脈を徹底的に排除することでした。赤土の壁、突き抜けるような青空、そして容赦なく降り注ぐ強烈な自然光。この異郷の乾いた光と土の質感の中に、当時18歳の透き通るような白い肌を置くことで、生々しい肉感を超越した「神話的な彫刻美」へと昇華させる狙いがありました。
版元として白羽の矢が立ったのが、哲学書や語学書、現代思想の専門書を数多く手がけていた朝日出版社でした。通常の大衆週刊誌系出版社ではなく、硬派な学術・芸術出版社から刊行されたこと自体が、本作を単なるアイドルの露出物ではなく「現代アートの文脈」に位置づける決定打となったのです。装丁の質感から印刷技術、紙の選定に至るまで、徹底して格式の高い美術品としての体裁が整えられました。