メジャーを手に取ったものの、自分の首の後ろから手首までを一人で正確に測るのは物理的に極めて困難だ。無理に腕を回せば姿勢が崩れ、数センチ単位の測定誤差が容易に発生してしまう。ここではテーラーの現場で推奨されている「狂いの出ない計測手順」を公開する。
1. 誰かに測ってもらう場合の「基本姿勢」
協力者がいる場合は、薄手のインナーを着用し、背筋を伸ばして直立する。視線は正面に向け、両腕は力を抜いて自然に体側に垂らす(軽く「八」の字に開く程度が理想)。
首を前に倒したときにポコッと突き出る骨(第7頸椎)にメジャーのゼロを固定し、肩の骨の頂点を通って、手首外側の突き出た骨のやや先までを計測する。このとき、腕を極端に曲げたり、メジャーを強く引っ張りすぎたりしないことが鉄則だ。
2. 一人で完結させる「平置き採寸(ベストシャツ計測法)」
一人で計測しなければならない場合、直接身体にメジャーを当てるのは避けるべきだ。もっとも失敗がないのは、「現在ジャストサイズで着用できている手持ちのシャツ」を平置きして測る方法である。
シャツのボタンをすべて留め、背中側を上にしてシワを綺麗に伸ばした状態でベッドや床などの平らな場所に置く。後襟の付け根の中央から、肩の縫い目を通って袖口の先端までをメジャーに沿わせて測る。この実寸値を控えておけば、ECサイトのスペック表と直接比較することが可能になる。
3. 肩幅と裄丈の計算方法
手元に「肩幅」と「袖丈」しか記載されていない服の裄丈を割り出したい場合、標準的なセットインスリーブ(通常の肩位置に縫い目がある服)であれば、以下の計算式でおおよその数値を算出できる。
【計算式】:裄丈 = (肩幅 ÷ 2) + 袖丈
ただし、この計算式は左右対称の標準体型かつ肩先がジャストに合っている服にしか適用できない。肩パットの厚みやアームホールの深さによって1〜2cmのブレが生じるため、あくまで目安値として活用してほしい。
4. 着物裄丈測り方との違い
和装における着物裄丈測り方は、洋服とは明確に異なる作法が存在する。着物の場合は、腕を水平ではなく「斜め45度」に下ろした状態で、首の後ろのグリグリ(背中心)から手首のくるぶしがちょうど隠れる位置までを直線的に測る。洋服のように「動作時のツッパリを考慮して長めにする」という発想ではなく、手首がわずかに覗くジャストな美しさを重視するため、洋服の裄丈より1〜2cm短めに仕立てられるのが通例だ。