お釈迦様の本名はゴータマ・シッダールタ(サンスクリット語で「目的を達成した者」の意)。紀元前5世紀から6世紀頃、現在のネパール南部、インドとの国境近くに位置するシャカ国の王子として生を受けました。
母である摩耶夫人(まやぶにん)の受胎にまつわるエピソードは、仏教美術でも頻繁に描かれる象徴的な説話です。摩耶夫人はある夜、6本の牙を持つ気品ある白象が天から降りてきて、自身の右脇から胎内に入る夢を見て懐妊したと伝えられます。古代インドにおいて白象は神聖と王権の象徴であり、偉大な聖者が地上に降り立つ瑞兆とされました。
出産が近づいた摩耶夫人は、当時の習俗に従って実家へ里帰りする途上、美しい花々が咲き乱れるルンビニ園(現在はユネスコ世界文化遺産に登録)に立ち寄りました。無憂樹(アショーカの木)の枝に右手を伸ばしたその瞬間、お釈迦様は母の右脇から痛みもなく誕生したと伝えられています。
生誕直後の伝説はさらに劇的です。生まれたばかりの赤子は誰の手も借りずに東西南北へ向かって四方にそれぞれ七歩ずつ歩き、右手を天に、左手を地に指差して宣言を行いました。これが有名な生誕説話のクライマックスです。恵まれた王族の身分に生まれながら、人間の逃れられない苦悩(生・老・病・死の四苦)を深く見つめた彼は、29歳で妻子と富を捨てて出家。過酷な苦行の果てに菩提樹の下で瞑想に入り、35歳でついに心理の悟りを開いて「ブッダ(目覚めた人)」となりました。