和装の世界において、仕上がりの印象を大きく左右するのが上半身のVゾーンです。この首回りの土台を形成する衿芯とは、幅4〜5cm、長さ80〜90cmほどの細長い帯状の芯材を指します。着物の下に着るインナーである長襦袢の「地衿(じえり)」に縫い付けられた「半衿(はんえり)」の内側に差し込んで使用するのが基本的な構造です。
布地だけで仕立てられた長襦袢や半衿は非常に柔らかいため、そのまま着物を重ねると生地自身の重みや体の動きに負け、衿元がぐにゃりと波打ったり、時間とともに首元が詰まってだらしなく崩れてしまいます。衿芯を内部に通すことで、以下のような決定的なメリットが生まれます。
第1に、首の後ろ側の衿を引き下げる「衣紋抜き(えもんぬき)」の美しい孤を描くカーブが安定します。第2に、胸元で交差する左右の衿線がたるまず、直線的で清々しい着姿を一日中キープできます。着付け教室や出張着付けの現場を取材すると、「衿が浮いて首に沿わない」「衣紋がいつの間にか詰まってしまう」という相談の約8割が、衿芯の硬さの不一致や誤った装着方法に起因していることが明らかになっています。
衿芯には主に「差し込みタイプ」と、あらかじめ衿の中に縫製されている「縫い込みタイプ」の2種類が存在しますが、現代の着付けシーンにおいて流通している主流は、手入れや調整が容易な差し込みタイプのプラスチック衿芯やメッシュ衿芯です。