和菓子と洋菓子の決定的な違いとは?脂質や歴史からプロが徹底解剖

和菓子と洋菓子の決定的な違いとは?脂質や歴史からプロが徹底解剖

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和菓子と洋菓子の差異は、単なる材料の違いにとどまらず、両地域がたどってきた文明の歩みそのものを映し出しています。

日本の菓子の起源は、古代の人々が空腹を満たすために食した木の実や果実(水菓子)に遡ります。奈良時代に遣唐使が持ち帰った「唐菓子(からくだもの)」により穀物を油で揚げる技法が伝来しましたが、決定的な転換期となったのは鎌倉時代から室町時代にかけての茶道の成立でした。禅宗の僧侶たちが喫茶の風習とともに茶菓子を発展させ、茶の渋みを引き立てるための繊細な甘味が追求されるようになります。

茶道の「侘び寂び」の精神と結びついた和菓子は、過度な装飾や強烈な香りを削ぎ落とす「引き算の美学」を磨き上げました。四季の移ろいを花鳥風月になぞらえ、菓子の銘(名前)や色合いで季節を先取りする文化は、世界でも類を見ない日本独自の様式美です。

一方の洋菓子は、地中海世界から中世ヨーロッパの修道院、そして近世のフランス宮廷文化の中で劇的な進化を遂げました。広大な牧草地を背景とした酪農の発達により、豊富な牛乳、バター、チーズが手に入ったヨーロッパでは、風味を幾層にも重ね合わせる「足し算の美学」が花開きます。卵を泡立てて空気を抱き込ませるスポンジ技術や、砂糖を結晶化させて立体造形を作るピエスモンテなど、物理的・化学的なアプローチで圧倒的な華やかさを生み出していきました。

安土桃山時代には、南蛮貿易によってカステラや金平糖、ボーロといった「南蛮菓子」が日本へ渡来しました。しかし当時の日本は仏教の影響から獣肉食や牛乳の利用が禁忌とされていたため、乳製品を用いるレシピは定着せず、卵と砂糖の技術だけが和菓子の中へと同化していったという興味深い歴史的事実があります。

井上 凛
著者

井上 凛

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。