人間がサナダムシに感染する最大の原因は、幼虫が寄生している魚介類や食肉の生食、あるいは加熱不足での摂取です。空気感染や人から人への直接的な接触感染は基本的に起こりません。
日本国内で確認される条虫症の大半を占めるのが日本海裂頭条虫です。この寄生虫は、以下のような複雑な生活環(ライフサイクル)を経て人間の体内へと侵入します。
- 水中に排出された虫卵から孵化した幼虫(コラシジウム)を、第一中間宿主であるケンミジンコなどのプランクトンが捕食する。
- そのプランクトンをサケやマス(サクラマス、カラフトマス、シロザケなど)の稚魚が捕食し、筋肉内にプレロセルコイドと呼ばれる幼虫が寄生する。
- 幼虫を宿したサケやマスを、人間が加熱不十分な刺身や寿司、生のマリネとして食べることで小腸内に幼虫が定着し、数週間から数か月で巨大な成虫へと急成長する。
かつては北海道や東北地方の河川周辺での発症が目立ちましたが、低温物流網や急速冷凍技術、空輸技術が発達した現代では、全国どこの都市部であっても新鮮な生魚を口にする機会が増えたため、地域を問わず散発的な感染が確認されています。
また、魚類だけでなく、豚肉の生食から感染する「有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう)」や、牛肉の生食から感染する「無鉤条虫(むこうじょうちゅう)」なども存在します。特に有鉤条虫は、幼虫が人間の脳や筋肉に移行して「有鉤嚢虫症(ゆうこうのうちゅうしょう)」という重篤な合併症を引き起こすリスクがあるため、国際的にも強い警戒が払われています。