出産直後、多くの母親を困惑させるのが「マタニティブルー 涙が止まらない 理由」です。面会に来た家族の前で突然泣き出してしまったり、助産師の何気ないひと言に酷く傷ついて涙が止まらなくなったりする背景には、人体でも稀に見る劇的な内分泌系の激変が存在します。
妊娠中、母体の胎盤からはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンが、非妊娠時の数十倍から数百倍に達するレベルで大量に分泌され続けます。しかし、出産とともに胎盤が体外へ娩出されると、これらのホルモン血中濃度はわずか数日のうちに急激に底を打ちます。産婦人科医の臨床データによると、女性ホルモンのエストロゲン急減は「ジェットコースターのように垂直落下する」と表現されるほど極端なものです。
エストロゲンは脳内の神経伝達物質であるセロトニン(精神を安定させる物質)の合成や代謝に深く関与しています。これが急激に失われることで、脳内の情報伝達バランスが一時的にパニック状態に陥り、感情のブレーキが効かなくなります。つまり、突然涙が溢れ出すのは、悲しいから泣いているのではなく、神経伝達物質の急激な枯渇による「脳のエラー反射」に過ぎないのです。ここに分娩による極度の肉体的疲労、会陰切開や帝王切開の創部痛、そして数時間おきの授乳による慢性的な睡眠不足が重なることで、感情のコントロールは物理的に不可能な状態に追い込まれます。