銀座の狭小な空間で完結していたきよ田の美学が、突如として海を越えた出来事は世界のガストロノミー界に大きな衝撃を与えました。それがきよ田ロンドン店(Kiyota London)の誕生を巡る一連の経緯です。
2000年代後半、きよ田の握りに深く心酔した海外の熱烈な常連富裕層からの熱心な招聘を受け、3代目大将の木村正氏が英国・ロンドンのメイフェア地区へと渡りました。日本の伝統文化の極みである江戸前鮨が、食材も水も異なる異国の地で通用するのかという業界内の懸念をよそに、現地で調達した最上級の大西洋クロマグロや欧州近海の鮮魚を伝統の手仕事で昇華。舌の肥えた欧州のVIPや世界的セレブリティを驚愕させました。
商業的なチェーン展開を目的とした進出ではなく、「きよ田の魂をロンドンの地で体現する」という純粋な職人道から始まった挑戦でした。この大胆な海外展開の経験は、日本固有の職人技がいかに世界標準のファインダイニングとして普遍的な輝きを持つかを証明し、現在の銀座本店の神格化を一段と後押しする結果となったのです。