本作の心臓部は、一切の妥協を排して書き上げられた完全オリジナル脚本にある。既存のIP(知的財産)に頼り切った近年の企画開発とは一線を画し、何気ない日常の対話の中に人生の亀裂と再生を忍ばせた構成は見事と言うほかない。
夜の街で行き場を失った常連客たちが、カウンター越しに花を買い、酒をあおる。ある者は別れを告げるために白い薔薇を求め、ある者は失った愛を埋めるために強いジンを煽る。彼らの断片的な告白が重なり合うことで、現代社会が抱える孤独の輪郭が浮き彫りになっていく。観客の涙腺を安易に刺激するお涙頂戴のメロドラマではなく、人間の弱さをあるがままに肯定する骨太なヒューマンドラマとしての強度が、この脚本には宿っている。