ネット上の考察や議論において、オール・フォー・ワンはしばしば「純粋な悪の化身」「冷徹無比なサイコパス支配者」として語られがちです。しかし、物語が終幕へと向かうにつれて明らかになった彼の過去と経歴は、そうした一面的な怪物像とは異なる歪んだ人間性を浮き彫りにしました。
彼が他者から「個性を奪う理由」の本質は、世界を意のままに操ることそのもの以上に、弟である初代ワン・フォー・オール(与一)に対する異常な執着にありました。超常黎明期の混乱と貧困の中、ゴミ溜めのような環境で生まれた彼は、幼少期に読んだコミックに登場する「魔王」に自らを重ね合わせました。万人が恐れ、屈服する存在になることでしか、自らの存在意義を見出せなかったのです。
最終決戦において、エリの個性を利用した薬品によって若返り(巻き戻し)を選択した展開についても、当初は「全盛期の力による絶望的な制圧」と受け止められていました。しかしその真相は、肉体が若返るにつれて精神までもが退行し、合理的な判断力を失っていく自滅のカウントダウンでした。知的な支配者の仮面が剥がれ落ちた後に残ったのは、「弟を自分の手元に留めておきたい」という、あまりにも幼稚で独善的な我儘だったのです。