心理学および仏教哲学において、執着とは「特定の人物、物事、過去の出来事、あるいは自らの固定観念に強く心が囚われ、そこから離れられなくなっている状態」を指します。重要なのは、本人が執着している相手や対象そのものを愛しているのではなく、「その対象を失うことで生じる強烈な不安や孤独感」から目を背けるために、対象にしがみついている点です。
日常の対人関係において、多くの人が「愛しているから相手を諦められないのだ」と錯覚しがちです。しかし、臨床心理の現場では愛と執着の違いは明確に区別されています。愛の主体は「相手」にあり、相手の幸福や選択の自由を尊重します。対して執着の主体は常に「自分」であり、「自分を満たしてほしい」「自分を不安にさせないでほしい」という見返りの欲求が根底に存在します。
さらに混同されやすい概念として「依存」が挙げられます。執着と依存の違いを整理すると、依存は「対象がないと自己の精神的・身体的安定を維持できない機能不全状態(相手に寄りかかる行動)」を指すのに対し、執着は「対象を手放すまいと強く握りしめ、コントロールしようとする認知の固執」を指します。依存が進行した結果として執着が強まるケースが極めて多く見られます。