ビーチの破滅は、偶発的な事故ではなく、張り巡らされた嘘と個々のエゴが臨界点に達した必然の帰結でした。崩壊のドミノは、3つの致命的な段階を経て倒れていきました。
第1の段階は、ボーシヤの精神崩壊と死です。元の世界では冴えない父親の帽子屋を継ぎ、歌舞伎町で虚勢を張っていた彼は、「今際の国」で理想の王になろうと重圧に耐え続けていました。しかし、絵札以外の全トランプが集まりかけても元の世界へ帰れる保証がないという現実に直面し、精神を喪失。親友であるアグニに銃口を向けた結果、防衛と絶望のなかでアグニ自身の手によって射殺されてしまいます。
第2の段階は、チシヤの冷徹な裏切りとアリスの罠です。ボーシヤ不在の混乱を察知したチシヤは、相棒のクイナと共に金庫のトランプ強奪を計画。新参者のアリス(有栖良平)を巧みに誘導して囮として使い、武闘派に捕縛させました。この策略によって組織内の疑心暗鬼と武闘派の暴走は決定的なものとなります。
そして最終段階となったのが、ビーチ全体を会場として突如開始されたデスゲーム難易度「ハートの10」――【まじょがり】です。
ロビーで胸にナイフを突き刺されて絶命していた少女・モモカ。ゲームのルールは「少女の命を奪った魔女を特定し、裁きの炎で焼き尽くせばクリア」というものでした。しかし、ボーシヤを自ら殺害した罪悪感から狂気に陥っていたアグニ、そして暴力を正当化したいニラギら武闘派は、「全員を焼き尽くせばその中に魔女がいる」という凶行に走り、無差別虐殺を開始。プールサイドとホテル内は阿鼻叫喚の地獄と化しました。
アンによる科学的検証と、アリスの研ぎ澄まされた心理洞察によって明かされた「魔女の正体」は、自ら命を絶ったモモカ本人でした。「ハート」のゲームが持つ悪意――“他者の心理をもてあそび、信じ合う人間同士を殺し合わせる”という設計通りの惨劇が完成してしまったのです。