近年の制作潮流において際立つのは、実在のモデルや史実に基づいた実話ドラマの深化だ。綿密な取材に裏打ちされた脚本は、フィクションでは決して到達できない生々しい説得力を画面に宿らせる。
象徴的な一作が、『虹色のチョーク 知的障がい者と歩んだ町工場のキセキ』だ。道枝駿佑が演じたのは、社員の大半が知的障害者であるチョーク製造工場の若き後継者。働く喜びとは何か、人を信じるとはどのような覚悟か。道枝は迷いながらも前を向く主人公の葛藤を等身大の演技で体現し、障害者雇用の現実と温かな奇跡を丁寧に描き出した。
また、劇団ひとりが監督・脚本を務めた『無言館』も極めて意欲的な挑戦だった。戦没画学生の遺作を集めた美術館の設立秘話を、静謐なカメラワークと無駄を削ぎ落としたダイアログで構成。エンターテインメントの枠に安住せず、戦争の記憶と芸術への愛を真っ向から問うた演出は、映画界からも高い評価を集めた。