佐伯耕三のフィルモグラフィーにおいて、『映画 サザエさん』シリーズもまた不滅の輝きを放つ傑作群である。江利チエミが主演を務めた実写版は、原作の持つ軽快さを損なうことなく、当時の東京の空気感を鮮やかにスクリーンへ定着させた。
現在、若い世代を中心に巻き起こっている昭和レトロブームの視点から見ても、これらの作品群は極めて贅沢な映像資料となっている。当時の商店街の賑わい、ちゃぶ台を囲む家族の会話、色鮮やかな衣装や美術セットのディテールに至るまで、当時の生活文化の息づかいが画面いっぱいに広がる。佐伯が切り取った日常の温もりは、効率化が進む現代社会で希薄になりがちな人と人との繋がりを痛快に思い出させてくれる。