閉ざされた日々に差し込んだ一筋の光が、東京帝国大学で社会運動に奔走していた法学生・宮崎龍介との巡り合いだった。中国革命を支援した宮崎滔天の息子である龍介は、白蓮の自作戯曲の上演をめぐる相談をきっかけに彼女と急速に心を通わせていく。
知性と情熱を兼ね備え、身分差を越えて一人の人間として向き合ってくれる龍介との文通は数百通に及んだ。病弱で貧しい学生だった龍介と、九州の大富豪の妻という隔絶した立場。発覚すれば姦通罪として法的に処罰される危険と、華族除籍の社会的制裁を覚悟の上で、白蓮はすでに龍介の子を身ごもった状態で出奔を決行した。二人が交わした言葉の数々は、激動の時代を駆け抜けた魂の共鳴そのものであった。