中之嶽神社の参拝を語るうえで避けて通れないのが、鳥居をくぐった直後に立ちはだかるきつい石段です。見上げるような直線の石段は傾斜が30度を超えており、一段ごとの奥行きも狭いため、手すりや鎖を掴まなければ登り降りが困難なほどです。
実際に現地で参拝者の様子を観察すると、運動靴やスニーカー以外の履物(ヒールやサンダル)で訪れた参拝者が苦戦する姿が散見されます。足腰に不安のある参拝者のために、右手に緩やかな迂回用の山道も整備されていますが、急階段を一段ずつ踏み締めて登ること自体が「自身の邪念を払い、覚悟を固める行(ぎょう)」としての意味合いを持っています。
この険しい試練を乗り越えた先に広がる中之嶽神社ですが、もうひとつ全国的な知名度を誇るのが野球のお守りです。鮮やかな赤や青のバットとボールが刺繍されたお守りは、高校野球の名門校球児やプロ野球関係者が大会前にこぞって授かりに訪れます。
なぜ山奥の古社で野球守りが誕生したのか。その真相は、大黒様が掲げる剣が「三振を断ち切る」「勝利のヒットを放つ(運を切り開く)」という勝負のメタファーとして信奉されたことにあります。さらに歴代宮司が青少年のスポーツ育成に熱心であった歴史が結びつき、現在では球児のみならず、あらゆるスポーツ競技者や受験生が「絶対に負けられない勝負の守り神」として買い求めています。