「魚の骨が喉に引っかかったら、白米の塊を飲み込んで押し流す」という言い伝えは、昭和から平成にかけて広く浸透していました。しかし日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の指針でも明記されている通り、ご飯の丸呑みが危険とされる医学的理由は明白です。軟らかい炭水化物の塊で押し込む力は、骨の向きを予測不能な方向へねじ曲げ、粘膜の浅い位置にあった骨を筋肉の深層や食道壁へと深く突き刺してしまう決定的な引き金になります。
最悪の場合、太い骨が食道壁を突き破る「食道穿孔」を引き起こし、細菌が胸部の深部に侵入して魚の骨による咽頭炎や深部感染症リスク(降下性壊死性縦隔炎や咽後膿瘍)へと悪化します。これらは致死率が二桁に達することもある重大な病態であり、単なる小骨と侮ることはできません。
一方、ネット上では「そのまま放っておけば胃酸や唾液で溶けて自然に消える」という言説も見受けられます。確かに、アジやサンマなどの極めて微細な軟骨であれば、嚥下運動に伴う摩擦によって魚の骨が自然に抜ける確率と経緯を辿るケースも一部存在します。しかし、タイやタラ、ウナギ、サケといった硬く太い骨の場合、放置によって自然治癒することはまずありません。それどころか、組織内に留まった骨の周囲で炎症反応が起き、局所の肉芽形成や化膿性病変へと進展するため、魚の骨を放置するとどうなるかの真相は「悪化の一途をたどるリスクのほうが圧倒的に高い」というのが現代医療の確定見解です。