霊山歴史館のもうひとつの強力な柱が、京都の治安維持を担い血風を巻き起こした新選組に関する膨大な史料群です。新選組をテーマにした博物館や特別展は全国に存在しますが、本館の際立った特徴は「虚飾を排した一次史料による実像の提示」に徹している点です。
展示室には、局長・近藤勇が所持したとされる刀剣「阿州吉行」をはじめ、副長・土方歳三の直筆書状、さらには隊士たちが実際に着用した鎖帷子や隊旗(ダンダラ羽織の原資料研究)など、創作物では窺い知れない過酷なリアリズムが充満しています。当時、洛中を震撼させた池田屋事件の再現模型や戦闘の詳細記録は、隊士たちが抱いていた純粋な忠誠心と、時代の奔流に翻弄される悲劇性を同時に物語っています。
さらに注目すべきは、本館が佐幕派の新選組だけでなく、敵対関係にあった西郷隆盛、木戸孝允(桂小五郎)、高杉晋作といった倒幕・維新側の志士たちの直筆遺墨や所用品も同一空間に並置している事実です。双方が掲げた「日本の未来」への覚悟が対峙する空間構成は、来館者に対して特定の英雄譚に逃げ込まない、重層的な歴史鑑賞体験を提供しています。