『火垂るの墓』清太はなぜ働かない?クズ批判の真相と7000円の謎

『火垂るの墓』清太はなぜ働かない?クズ批判の真相と7000円の謎

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インターネット上で清太が「クズ」と厳しく糾弾される最大の論点は、「健康な男子でありながら一切働こうとせず、妹を守る責任を放棄した」と受け取られている点にあります。叔母の家で居候を続けながら、昼間からオルガンを弾き、節子と海で遊び呆け、家事や勤労奉仕を手伝わない姿に、現代の視聴者が強い苛立ちを覚えるのは無理もありません。

しかし、劇中における清太の年齢設定は14歳、旧制中学校の3年生です。当時の制度下において、14歳の中学生は「勤労動員(学徒動員)」の対象でした。彼が通っていた神戸の学校や動員先の軍需工場は、劇中冒頭で描かれた1945年(昭和20年)6月5日の神戸大空襲によって壊滅しています。工場が灰燼に帰したことで動員体制そのものが麻痺し、清太は登校すべき場所と所属すべき組織を突如として失っていた事実を見逃してはなりません。

問題は、その後に清太が取った行動です。西宮の親戚宅へ身を寄せた際、近隣の防空演習や地域組織である「隣組」の活動に参加せず、新しい奉仕先を探そうともしませんでした。これには彼の家庭環境が深く影響しています。清太の父親は大日本帝国海軍の大佐であり、巡洋艦の艦長クラスを務める軍のエリート家庭でした。何不自由なく裕福に育った少年にとって、泥臭い肉体労働や頭を下げる行為は、受け入れがたいプライドの屈辱だったのです。結果として「働かない」のではなく「自尊心を守るために社会へコミットすることを拒否した」というのが、清太の行動心理の実像です。

渡辺 美咲
著者

渡辺 美咲

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。