ふたりの関係性の集大成であり、読者の涙を絞り尽くしたのが無限城編における不死川兄弟の共闘、そして上弦の壱・黒死牟(こくしぼう)との死闘です。
才能を持たない玄弥が鬼殺隊で生き残るために選んだ手段、それは不死川玄弥の鬼食いの理由に直結していました。鬼の肉体を喰らうことで一時的に鬼の怪力と再生能力を得るという、命を削る禁忌の戦法です。身体が両断されるほどの致命傷を負いながらも、玄弥は黒死牟の髪や刀の一部を喰らい、命を賭して血鬼術を発動。兄や柱たちの活路を開く決定的なアシストを果たしました。
勝利の代償はあまりにも過酷でした。鬼化が進みすぎた玄弥の身体は、鬼の消滅と同様に崩壊を始めます。その場へ駆け寄った実弥の取り乱し方は、かつて柱合会議で見せた凶暴な風柱の姿とは完全に別人のものでした。
「神様どうか、どうか弟を連れて行かないでくれァ!!」
天を仰ぎ、なりふり構わず絶叫する実弥。その姿は、かつて夜明けの街角で母を抱きしめて泣いていた少年のままでした。崩れゆく玄弥は、最後の力を振り絞って兄へと語りかけます。
「兄ちゃん……迷惑ばっかりかけて……ごめん……」
「兄ちゃんが……俺を……守ろうとしてくれたように……俺も……兄ちゃんを守りたかった……」
すれ違い続けた歳月を経て、ふたりは命の潰える寸前にようやく涙の仲直りを果たしました。「お前は生きて幸せになるはずだったんだ」と号泣する実弥の手の中で、玄弥は「世界で一番優しい人」と兄を称え、灰となって風に消えていったのです。この不死川兄弟の死亡シーンの結末は、単なる死別を超えた「魂の完全な赦しと救済」として、読者の胸に消えない爪痕を残しました。