全国に点在する珍しい苗字や特定の地域に集中する姓の中には、キリシタン文化との深い関連が指摘されているものが存在します。代表的な事例をカテゴリ別に整理しました。
① ポルトガル語・宗教用語の音訳(当て字)とされる姓
最も有名なのが、ポルトガル語で「十字架」を意味する「Cruz(クルス)」に由来するとされる「久留須」「九留須」「来栖」「栗須」などの苗字です。もちろん、茨城県の来栖のように純粋な日本の地名(栗栖=栗の木が生える土地)発祥のケースも多いものの、九州地方におけるクルス姓は、十字架への信仰を密かに名字に込めた伝承が色濃く残っています。また、ポルトガル語で「神」を意味する「Deus(デウス)」から「出水」「出臼」「出須」へ転訛したという説も存在します。
② 洗礼名(サントス名)に由来すると伝わる姓
宣教師から授かったクリスチャンネームを漢字表記に変えたとされる苗字も興味深い事例です。 ・パウロ(Paulo) = 「羽裏(はうら)」「羽野」「葉室」など
・ジョアン(João) = 「助庵」「城庵」「上安」「城安」など
・マルタ(Marta) = 「丸田」「円田」「丸多」など
・ルカス(Lucas) = 「留加」「流過」など
これらの苗字を持つ家系すべてがキリシタンというわけではありませんが、禁教令以前に受洗した有力者が、明治期の苗字登録時に先祖の洗礼名を戸籍名として復活させた記録が各地の郷土史に残されています。