かつての日本企業で当たり前だった「課長、部長へと階段を駆け上がることが成功」という単線型の出世街道は、完全に崩壊しつつあります。厚生労働省の賃金構造基本統計や民間リサーチ機関の調査を紐解くと、一般社員の約半数以上が「役職に就きたくない」と回答する状況が定着してきました。この現象の根底には、日本型雇用の疲弊と働き手の価値観の劇的な変化が存在します。
昇進を拒絶する最大の要因として挙げられるのが、いわゆる「名ばかり管理職」に対する忌避感です。係長や課長に昇進した途端、管理監督者扱いとなって残業手当が打ち切られ、役職手当を上回る労働時間を強いられる事例は後を絶ちません。プレイングマネージャーとして現場実務を抱え込みながら、部下の労務管理、メンタルヘルス対策、上層部からの厳しい業績ノルマという「三重苦」にさらされる上司の背中を見て、若手や中堅が憧れを抱くはずもありません。
業務外の時間を自己投資や副業、家族との団らんに充てるタイムパフォーマンス(タイパ)意識の浸透も、昇進拒否の背中を押しています。社内政治に忙殺されて神経をすり減らすよりも、定時で仕事を切り上げて個人の幸福を最大化するほうが合理的であるという判断が、現役世代の共通認識になりつつあるのが実情です。