現在でもネット上のまとめ記事やSNSの投稿では、「フェミニスト団体からのバッシングに屈した」「お堅いクレーマーに潰された」といった言説が散見されます。しかし、一次資料と岩下社長の発言記録を詳細に精査すれば、それが完全な事実誤認であると分かります。
岩下食品に対して外部の抗議団体から組織的な圧力がかかったという公的記録は存在しません。同社はもともと、ネット上のジョークやパロディに対して極めて寛容で、ユーザーとの距離の近さを武器にしてきた企業です。もし単なる「見た目が下品だ」という抽象的な批判だけであれば、同社はリニューアル版でユーモアを交えつつ販売を継続していたはずです。
決定的な違いは、「不快に思う人がいるからやめた(自主規制)」のではなく、「現実に危害を加えられた被害者が発生したからやめた(加害防止)」という点にあります。この両者を混同してしまうと、問題の本質を見失います。企業が自社製品による実質的なセクハラ被害を認識した以上、これ以上加害者を利する道具を世に供給し続けるわけにはいかないという、極めて厳格かつ真っ当なコンプライアンス判断だったのです。