「顎変形症の手術はすべて保険で安く受けられる」と誤認されがちですが、健康保険の適用を受けるには国が定めた厳格な法的・医学的要件をクリアしなければなりません。
日本矯正歯科学会および厚生労働省の規定によると、保険適用となる条件は以下の通りです。
第1に、都道府県知事から指定を受けた「顎口腔機能診断施設」および「自立支援医療(育成医療・更生医療)指定医療機関」で診断・治療を受ける必要があります。一般的な街の矯正歯科クリニックや美容外科単独では、保険適用の外科矯正を行うことができません。
第2に、精密な頭部X線規格写真(セファログラム)や咬合診断によって、歯並びの乱れだけでなく「顎骨そのものの位置異常や大きさの不調和による著しい咬合異常」が客観的に証明される必要があります。
第3に、治療ステップとして「術前矯正(1年〜2年)→ 口腔外科での入院骨切り手術 → 術後矯正(1年程度)→ 保定期間」という決められた医療プロセスを完遂することが義務付けられています。手術だけを先行して行うサージェリーファーストや、表側ワイヤー以外の裏側矯正・マウスピース矯正を選択した場合は、原則として全工程が自由診療(自費)扱いとなる点に注意が必要です。
病院や執刀医(名医)を選ぶ際は、大学病院や総合病院の口腔外科と緊密に連携している矯正歯科を選ぶことが鉄則です。年間症例数が豊富で、口腔外科専門医と日本矯正歯科学会臨床指導医(旧専門医)がチームを組んでカンファレンスを行っている施設を基準に選定することが成功への第一歩となります。