メロンは収穫後にも呼吸を続け、自らエチレンガスを出してデンプンを分解する「追熟(ついじゅく)」を必要とする果物です。収穫直後は糖度こそ高くても、果肉が硬くペクチンが分解されていないため、本来の芳醇な食感やアロマは引き出せません。ここで鍵を握るのが、ツルの枯れ具合と収穫時期、そして五感を使った見極めです。
市場に出回るアンデスメロンやクインシーメロンなどはツルが切られた状態で並ぶことも多いですが、クラウンメロンなどの高級アールス系には「T字型のツル」が残されています。収穫直後のツルはみずみずしい緑色でピンと張っていますが、追熟が進むにつれて水分が抜け、次第に萎びてきます。プロが見定めるメロンの食べ頃サインは、「T字の片側または全体が茶色く枯れ、しなびて垂れ下がってきた状態」です。緑色が完全に失われ、ツルの根元が乾燥した段階こそが、果肉の繊維がほどけ始めた合図となります。
ツルがない個体やパック詰めの場合は、メロンの香りの変化に神経を集中させます。未熟なうちは青臭いウリ科特有の匂いしかしませんが、完熟が近づくと果実の底部からマスク(ムスク=麝香)特有の甘く濃厚な香りが漂い始めます。スーパーの売り場でも、鼻を近づけた瞬間に甘やかな香気を感じ取れる個体は、追熟が最終段階に入っている証左です。
そして最終関門となるのが、メロンの底の硬さ確認です。いわゆる「花落ち」と呼ばれる果実のお尻(底の中央部分)周辺を確かめます。ただし、ここで指先を強く押し込むのは厳禁です。組織が破壊されて打撲傷となり、そこから一気に腐敗や発酵が進んでしまいます。手のひら全体で果実を包み込み、メロンのお尻の弾力を親指の腹でそっと撫でるように確かめましょう。「硬いゴムボールのようだった感触が、耳たぶやすこし固めのマシュマロ程度にわずかに弾力を帯びて沈む感触」が得られれば、まさにその日、あるいは翌日がプロが教える完熟の見極め方における完璧なピークです。