台所から発掘された茶葉を手にしたとき、誰もが抱く疑問が茶葉賞味期限切れ飲めるかという点です。消費者庁および農林水産省の食品表示基準に基づけば、食品に表示される期限には「賞味期限(美味しく食べられる期限)」と「消費期限(安全に食べられる期限)」の2種類が存在します。乾燥加工が施された茶葉に表示されているのは、例外なく賞味期限です。
水分含有量が極めて低い茶葉は、適切な環境で密閉されている限り、微生物が急速に増殖しにくい構造を持っています。食品工学における安全係数(一般的に0.8前後)を逆算すると、メーカーが設定した未開封茶葉の日持ち期間(通常1年〜2年)に対し、未開封かつ冷暗所保管であれば、賞味期限切れ1年のお茶であっても「直ちに健康被害を及ぼす毒物に変質している可能性」は極めて低いと言えます。
しかし、「飲めるか否か」と「お茶として美味しく味わえるか」は全く別の問題です。製茶の現場で日本茶鑑定士が指摘するように、賞味期限を1年過ぎた茶葉は、空気中のわずかな酸素や光によって内部の葉緑素(クロロフィル)が褐色物質フェオフィチンへと分解されています。さらに、茶葉に含まれる不飽和脂肪酸が徐々に酸化し、特有の「古茶臭(こちゃしゅう)」と呼ばれる油の劣化したような不快な匂いを生み出します。衛生的に飲用可能であったとしても、緑茶特有の爽快な芳香やアミノ酸(テアニン)の旨味は完全に失われている現実を理解しておく必要があります。