インターネット上の掲示板やSNSで飛び交う「海洋研究開発機構 やばい」という言説を精査すると、そこには大きく分けて2つの全く異なる文脈が存在します。1つは、世界最高峰の深海掘削・潜水技術に対する純粋な畏怖の念。もう1つは、内部で働く研究者や技術者が直面する雇用形態や閉鎖的労働環境への告発めいた悲鳴です。
技術面における「やばさ」は、まさに国家の威信そのものです。水深6,500メートルまで潜航可能な「しんかい6500」は、深海生物の生態解明や海底資源探査において30年以上にわたり無事故で運用を続け、世界の海洋科学界を牽引してきました。また、マントル到達を目指す地球深部探査船「ちきゅう」の巨大プロジェクトなど、他国の追随を許さないスケールの設備と研究予算が投じられています。一般公開イベントなどで研究施設を目の当たりにした見学者からは、「設備の巨大さと研究レベルが異次元すぎてやばい」という感嘆の声が絶えません。
しかし、もう一方の「やばい」は、研究現場のシビアな雇用環境に起因します。独立行政法人の改革以降、国立研究機関全般を覆う「選択と集中」の波はJAMSTECにも押し寄せています。とくに若手研究者(ポスドク等)を取り巻く任期付き雇用の問題、長期航海に伴う過酷な拘束時間、そして研究資金獲得のための事務作業の増大が現場の疲弊を招いているという指摘は、現場のOBや現役研究者の手記・口コミサイトでも繰り返し語られる海洋研究開発機構 噂の真相の核心です。