言葉一つで世論が激変し、巨大な予算が動く。日本の広告業界を牽引してきた株式会社電通をはじめとするクリエイティブの現場では、かつてから「一筆で景色を変える言葉」の探求が続けられてきた。商品やサービスのスペックを100ページにわたって説明するよりも、心を射抜くひとことが消費者の購買意欲を底上げする。それは洗練されたメッセージングの勝利に他ならない。
この手法を政治の政治闘争へ持ち込み、世論を完全に味方につけた象徴的な存在が小泉純一郎元首相だ。「構造改革」「自民党をぶっ壊す」といった、複雑な政治的背景を極限まで削ぎ落とした短いキーワードは、テレビのワイドショーを通じて瞬く間に全国へ伝播した。複雑な議論を一つの象徴的な言葉へ凝縮する技術は、有権者の思考のショートカットを生み出し、巨大なうねりを創出する原動力となったのだ。