JR中央線の武蔵小金井駅北口を降り、賑やかなロータリーを抜けて徒歩数分。細い路地に入ると、かつて事件の舞台となったビルがひっそりと佇んでいる。周りには居酒屋や住宅が立ち並び、夕刻には買い物客や仕事帰りの人々が行き交うごく普通の街並みだ。10年の歳月を経て周辺の店舗はいくつか入れ替わり、当時の重苦しい空気は表面上、完全に拭い去られたかのように見える。
しかし、あの日の記憶を抱え続ける地元住民は少なくない。近隣の商店主は「あの日の警察車両のサイレンと悲鳴は忘れられない。普段は本当に静かな場所だからこそ、あんな凄惨な事件が起きるとは誰も思っていなかった」と語る。現場付近には防犯カメラが新設され、街頭防犯体制は当時と比べて格段に強化された。静けさを取り戻した路地は、一歩間違えれば悲劇が再発しかねない密室性を孕んでいたことを、今も無言のうちに物語っている。