なぜ多くのドライバーが、リスクを冒してまで不適切な追い越しを行ってしまうのでしょうか。交通心理学の観点から見ると、そこには人間特有の「先行車バイアス」と「時間短縮の過大評価」が作用しています。
人間は視界を遮る前方の障害物や遅い車両に対して強いストレスを感じやすく、「前車を1台抜けば劇的に目的地へ早く着く」という錯覚に陥りがちです。しかし、実際の一般道における実証データでは、一般車両を1〜2台追い越したところで、数キロ先の赤信号によって追いつかれ、短縮できる時間は平均して数十秒から数分程度に過ぎないことが明らかになっています。
わずか数分の短縮のために、対向車との正面衝突や歩行者事故のリスク、反則金や免許停止といった行政処分のペナルティを背負うことは、合理的なリスクマネジメントの観点から完全に割に合いません。
【プロの結論】追い越しを行うべき状況と控えるべき判断基準
安全かつ法的にクリーンな運転を維持するための判断基準は極めてシンプルです。
【追い越しを控えるべきケース(推奨)】
・一般道で前車が法定速度に近い速度で流れている場合
・片側一車線で、前方の視界が完全にクリアでない道路状況
・自身が焦りやイライラを感じている心理状態のとき
【慎重な追い越しが認められるケース】
・高速道路で登坂車線等があり、走行車線の大型特殊車両や極端な低速車を安全にパスする場合
・農耕車や故障車など、極めて低速(時速20km以下など)で移動する車両を、見通しの良い直線区間で安全確認を徹底して抜く場合
「抜くべきか否か」で迷った際は、「抜かない」を選択することが、結果として最も安全かつ確実な到着への近道となります。