ネット上には「ささみは強火で一気に焼けば旨味が閉じ込められる」「酒を振ればどんな加熱でも柔らかくなる」といった誤った言説が散見されます。しかし、食品科学の観点から見ると、これはパサつきを招く最大の要因です。
まず押さえるべきは、ささみ下処理筋取りのコツです。筋を残したまま加熱すると、筋が激しく収縮して肉全体を歪ませ、内部の水分を絞り出してしまいます。包丁で筋を削ぎ落とそうとすると身が崩れがちですが、「筋の先端をキッチンペーパーで掴み、筋をフォークの隙間に挟んで下に押し下げる」手法をとれば、肉を傷つけずにわずか3秒で筋だけを抜き取ることが可能です。
また、「強火での急速加熱」はタンパク質(アクチン・ミオシン)の変性を急激に進め、スポンジを絞ったように肉汁を奪います。正解は「弱火から中弱火でのじっくり加熱」、あるいは「余熱による低温調理」です。厚みのある部分を観音開きにして厚さを均一に整えることも、加熱ムラを防ぐ決定的なポイントとなります。