役者の血統論だけで歌舞伎を語ることはできない。その血脈をプロデュースし、興行として成立させている松竹株式会社の存在があるからだ。東京・銀座にそびえる歌舞伎座は、まさにその権力構造が可視化される神聖な舞台である。
興行主である松竹は、各家の格付けや役者同士の相性、さらには襲名披露のタイミングを緻密に計算しながら年間の座組を構築する。伝統芸能界において、どの役者がどの月、どの劇場で座頭を務めるかは、その家の勢力図をそのまま反映する政治的判断にほかならない。
名門の血を引く役者であっても、集客力が伴わなければ中央の舞台から外される冷徹なビジネスの側面も併せ持つ。血統の重みと興行収入という現実的な数字。この二つのバランスを巧みに操りながら、伝統のエコシステムは維持されている。