ランニング中の歯痛に直面した際、多くの人がランニングによる歯痛は何科にかかるべきか、走ると歯が痛いときは耳鼻科か歯科かという選択で立ち往生します。医療機関のハシゴを防ぐため、症状の出方に応じた明確な判断基準を持っておくことが不可欠です。
まず、「耳鼻咽喉科」を優先すべきケースは以下の通りです。
- 痛む部位が「上の奥歯」に限られており、1本ではなく広い範囲が全体的に響く。
- 前かがみになったり、頭を振ったり、階段を駆け下りたりすると痛みが強まる。
- 鼻づまり、黄色っぽい粘り気のある鼻水、頬の奥の圧迫感や重苦しさがある。
一方、「歯科」を優先すべきケースは以下の通りです。
- 痛む歯が特定の1本に限定されており、指や舌で押すとぐらつく、または明確な打診痛がある。
- 冷たい水やお湯を口に含んだ際、鋭い痛みが数秒以上持続する。
- 過去に神経の処置をした歯や、大きな被せ物・詰め物がある箇所が痛む。
ただし、歯科的な虫歯や歯周病の病原菌が上顎洞へ侵入して引き起こされる「歯性上顎洞炎」という混合型疾患も存在します。この場合は歯科と耳鼻咽喉科の双方が連携したCT撮影や治療が求められます。
もし練習中やレース中に走ると歯がズキズキする際の対処法としては、直ちに走行ペースを落としてウォーキングに切り替え、心拍数を落ち着かせることが第一です。痛む患部を指や舌で執拗に触らないこと、そして患部の血流を急激に促進させる長風呂や飲酒をその日は控えることが鉄則となります。一時的な鎮痛には市販のロキソプロフェンやイブプロフェンなどの抗炎症鎮痛薬が奏功しますが、これはあくまで対症療法に過ぎず、翌日以降の早期受診が欠かせません。
【プロの結論】早期診断の基準とトレーニング管理
走行時の歯痛は、身体が運動負荷や潜伏する疾患に対して発している重大な警戒シグナルです。多くのランナーは「走れないほどの痛みではないから」と市販の鎮痛薬で痛みを誤魔化し、練習を継続してしまいがちですが、これは火災報知器のベルを鳴り止ませて火元を放置する行為に他なりません。
特に上顎洞炎を放置した場合、副鼻腔全体へ炎症が波及する慢性副鼻腔炎(蓄膿症)へと移行し、完治までに数カ月以上の投薬や内視鏡手術が必要となるケースがあります。また、歯根の炎症を放置すれば周囲の顎骨が溶け、最終的に抜歯を余儀なくされるリスクすら孕んでいます。
「普段は無痛だが、走ると歯に振動が響く」という段階は、病巣が初期または限局している貴重なサインです。自己判断で練習を強行せず、痛みの性質(上の奥歯全体か、特定の1本か)を客観的に観察した上で、適切な専門医の診察を受けることが競技生活の長期化を防ぐ唯一の近道です。