エクスプローラーやFinder上でフォルダを掴み、新しいドライブへ放り込む操作は直感的で手軽に見えます。しかし、数百ギガバイトから数テラバイトに及ぶデータ移行において、この手法は最もリスクの高い選択肢です。最大の要因は、OS標準のファイルコピー機能が「エラー耐性を持たない」設計になっている点にあります。
転送の途中でわずか1セクタでも読み取り不能な領域(バッドセクタ)に遭遇すると、転送プロセス全体がフリーズするか、何の警告もなくスキップされます。その結果、「転送完了」と表示されながらも中身が破損している、あるいは一部のサブフォルダが丸ごと抜け落ちているという、いわゆるサイレント破損が頻発します。
さらに、ファイルの作成日時や更新日時が「移行作業を行った日時」にすべて書き換わってしまい、過去の履歴追跡が不可能になる弊害も見逃せません。大手データ復旧業者のエンジニアは「データ移行中にPCがフリーズし、焦ってケーブルを引き抜いたことで両方のドライブがマウント不能になったという相談が毎月のように舞い込む」と証言しています。大切な記録を失わないためには、検証機能(ベリファイ)を伴う体系的なプロセスの導入が必須です。