京都の代表的な名産品として知られる「ちりめん山椒」のレシピをそのまま山椒の葉に応用しようとして失敗するケースも後を絶ちません。ここには、食材の性質に関する決定的な誤解が存在します。
ちりめん山椒は本来、初夏に収穫して下処理した「実山椒」と、乾燥させた「ちりめんじゃこ」を出汁と酒、醤油でサラリと炊き上げ、最後に天日やオーブンで軽く乾燥させてパラパラとした食感に仕上げるものです。一方、山椒の葉を用いた佃煮は、葉そのものが持つ水分を適度に残しつつ、ねっとりとした艶をまとわせる「しぐれ煮」に近い製法を採らねばなりません。
もし山椒の葉でちりめん山椒を作る場合は、最初からちりめんじゃこと葉を一緒に鍋へ放り込んではいけません。ちりめんじゃこが葉のアクと水分を吸い取って生臭くなり、葉はじゃこの塩分で硬化してしまいます。正しくは、まずちりめんじゃこを酒とみりんでふっくらと煮て下味をつけ、煮汁がほとんど無くなる最後の3分間に、下処理済みの山椒の葉を投入して一気に絡めるという手法を取ります。この時間差こそが、じゃこの白さと山椒の緑色のコントラストを際立たせ、双方の個性を殺さないプロの技術です。