SNSやネット掲示板において、日産スタジアムの体験談を検索すると必ずと言っていいほど話題にのぼるのが「音響の難しさ」と「突然の降雨リスク」です。ここには、会場構造に起因する物理的な制約がはっきりと影を落としています。
音響面について、音響関係の専門エンジニアや現場観戦者の声を総合すると、「反響による音のダブつき(ディレイ)」が最大の課題として挙げられます。巨大なすり鉢状の空間に加え、屋根の金属トラスやバックスタンドの壁面に反射した音が、スピーカーから直接届く音とわずかにずれて干渉します。特にアリーナ後方やスタンド2階の端部では、「ボーカルがワンテンポ遅れて反響する」「ベースの低音が輪郭を失ってこもる」といった現象が発生しがちです。近年の音響技術の進化により、アリーナ各所に補助スピーカー(ディレイタワー)を細かく配置してタイムアライメントをデジタル補正する公演が増加しているものの、密閉された専用コンサートホールと同等の音質を期待するのは酷と言わざるを得ません。
さらに切実なのが、天候リスクへの対応です。日産スタジアムは観客席の大部分を屋根が覆っている設計ですが、「全席完全屋内」ではありません。ここで覚えておくべき極めて重大な境界線が存在します。
スタンド1階席の「19列目」が濡れるか否かの分水嶺です。公式の建築構造上、2階スタンドが庇(ひさし)となって覆いかぶさっているため、1階スタンドの20列目以降(後方)および2階スタンドの全域は、吹き降りの暴風雨でない限り基本的に雨露をしのぐことができます。しかし、スタンド1階席の1列目から19列目、およびアリーナ席全域は完全にオープンエアの無防備な状態です。雨天時、客席での傘の使用は周囲の視界を遮り危険を伴うため厳しく禁止されており、合羽やレインポンチョの着用が絶対条件となります。チケットの印字が「1階スタンド前列」または「アリーナ」だった場合、天気予報が曇りであっても、足元まで覆える厚手のレインコートと荷物保護用の大型ビニール袋(45L〜70L)の準備を怠ることは許されません。