ウールリッチのタグ年代判別術|羊の向きとUsa製で暴く価値の決定的真相

ウールリッチのタグ年代判別術|羊の向きとUsa製で暴く価値の決定的真相

ウールリッチのタグ年代判別術|羊の向きとUsa製で暴く価値の決定的真相の要点を丁寧に掘り下げてご紹介します。

ネット上のまとめ記事や古着情報では、「羊が左なら70年代、右なら80年代」と単純化されて語られがちですが、服飾史の現場には必ず「過渡期の例外」が存在します。ここを知っておくことこそが、情報過多の時代に真贋を見極める武器となります。

第1の盲点は、1970年代末から1980年代初頭にかけての過渡期に混在するプロトタイプです。タグの地色は白いにもかかわらず羊が右を向いている個体や、逆に紺タグでありながら70年代のディテール(TALONジップなど)を引き継いでいる製品が実在します。これは工場に残っていた旧タグの在庫を使い切るために発生したケースや、モデルチェンジの試験運用期に出荷されたものです。したがって、羊の向き単体で100%断定するのではなく、副資材(ジッパーやボタン)の年代と突き合わせる必要があります。

第2の盲点は、カナダ生産ラインや欧州ライセンス品の存在です。ウールリッチは北米市場向けにカナダ工場を稼働させていた時期があり、そこではアメリカ本国とは微妙に異なるタグデザイン(カエデのマークが併記されたタグや特殊なフォント表記)が採用されていました。また、80年代後半から欧州で展開されたモデルには、アメリカ規格にはないファッショナブルなタグが付いていることがあります。これらを「偽物」と早合点してしまう初心者が多いのですが、実際には正真正銘のオフィシャルヴィンテージであり、モデルによっては現地でも希少価値が認められています。

現行品とヴィンテージの違いを決定づけるもう一つの要素は「内タグの言語数」です。2010年代以降の現行品は、世界流通を前提としているため、日本語(ウールリッチジャパン表記)を含む5〜10カ国語以上の多言語洗濯表示タグが束になって縫い付けられています。対して、70〜80年代のヴィンテージは、英語のみ(または英語とフランス語の簡素な併記)で記された小さな白い布タグが1〜2枚挟まれているだけです。この内タグの厚みと言語構成を見るだけでも、現代の製品か過去の遺産かを一発で見抜くことができます。

橋本 菜々子
著者

橋本 菜々子

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。