岩井志麻子氏の若い頃のキャリアは、意外にもティーン向けレーベルから始まっています。岡山県立和気閑谷高校在学中の1982年、第3回小説ジュニア佳作に入選し、本名である「竹内志麻子」名義で少女小説家としてデビューを果たしました。
しかし、結婚・出産や離婚に伴い、一時は文筆活動の停滞や経済的困窮を味わうことになります。そんな逆境の中で背水の陣を敷いて書き上げたのが、1999年のホラー小説『ぼっけえ、きょうてえ』でした。岡山弁で「とても、怖い」を意味するタイトル通り、明治時代の遊郭を舞台にしたおぞましくも哀しい人間ドラマは選考委員から絶賛され、第6回日本ホラー小説大賞を受賞します。
さらに翌2000年には同作で第13回山本周五郎賞を受賞。文壇に鮮烈な衝撃を与え、岡山の一主婦から一躍トップ作家へと華麗なる返り咲きを果たしました。この若い頃の挫折と這い上がりの経験が、現在の彼女の骨太な人間観と表現力の源泉となっています。