師弟関係が家族以上に濃厚であるからこそ、一度歯車が狂うと修復不可能な対立に発展することもあります。お笑い史には、幾多の確執と和解のドラマが刻まれています。
代表的な事例が「破門」を巡る騒動です。師匠の教えに背いて勝手な仕事を請け負う、酒席で粗相を犯す、あるいは芸風を巡って衝突するなど、破門の理由は多岐にわたります。昭和の興行界において、師匠からの破門は即座に業界からの追放を意味していました。後ろ盾を失った芸人は舞台に立てず、芸名を剥奪されるケースも珍しくありませんでした。
しかし、破門の裏側に「親心」が隠されていたケースも少なくありません。師匠が弟子を一人前の芸人として独り立ちさせるため、あえて厳しい言葉を投げかけて突き放す「偽装破門」のような儀式も存在しました。弟子が売れっ子になった後に酒席で再会し、師匠が「よう頑張ったな」と一言呟いて涙を流す――そうした和解の光景が、数々の回顧録で語られています。
ネット上では「あの芸人と師匠は絶縁状態にある」といった噂が独り歩きしがちですが、当事者同士の胸中は外野の想像以上に複雑です。長年の確執を経て、師匠の訃報に接した際に初めて「あの厳しさは自分を守るための防波堤だった」と気づく芸人は後を絶ちません。表面的な不仲報道の奥には、情愛とプライドが交錯する人間劇が存在しています。