口腔疾患を専門とする病院歯科や大学病院の現場で、医師たちが口を揃えて指摘するのが「痛みの欠如による初診遅延」です。SNSや知恵袋、健康相談コミュニティを分析すると、「痛くない舌の裏のしこりを数ヶ月放置していた」「口内炎だと思ってビタミン剤を飲み続けていた」という投稿が後を絶ちません。
都内の大学病院口腔外科を受診した50代男性のカルテ記録によると、男性は舌の裏側にできた白っぽい米粒大の突起を自覚しながらも、痛みが皆無であったため「疲労による吹き出物」と軽視。半年後に病変が小指頭大まで拡大し、硬い芯を形成して初めて受診したところ、ステージⅡの舌がんと診断されました。男性は手記のなかで、「痛い口内炎なら数日で病院に行ったはずだ。『痛くない=安全』という思い込みが、これほど危険な罠だとは夢にも思わなかった」と述懐しています。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の調査報告でも、口腔がん患者が異変を自覚してから専門医を受診するまでの平均期間は「約2.3ヶ月」に及び、そのうち「無痛であったこと」を受診遅れの一因に挙げた割合は4割を超えています。舌の裏は感覚神経が過敏なエリアであるにもかかわらず、腫瘍の初期病変は深部組織を破壊するまで痛みを放ちません。「痛くない出来物こそ、最も警戒すべき危険信号である」という事実は、現代の医療現場における鉄則です。