2010年代初頭の日本映画界において、『ヒミズ』が与えた衝撃は波紋のように広がり続けた。東日本大震災直後の空気感を色濃く反映させたあの作品で、10代の少女が抱える泥臭いまでの生への執着を見事に演じ切った二階堂ふみ。その演技はヴェネツィア国際映画祭でのマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)受賞という形で結実した。
一方で、作品のダークな底流を支えていたのが、新井浩文が見せた独特の危険な静けさと凶暴性だった。二人の役者がカメラの前でぶつかり合ったとき、単なるストーリーテリングを超えた「生身の感情の破片」が画面から飛び散っていた。ただの演技合戦ではない。時代の出口なしの閉塞感と共鳴した、ある種の奇跡的な瞬間に満ちていた。