竹中直人の俳優キャリアにおいて、決定打となったのが1996年放送のNHK大河ドラマ『秀吉』です。尾張の貧しい農民の子から天下人へと駆け上がった豊臣秀吉を、泥臭くも圧倒的なエネルギーで熱演。決め台詞の「心配御無用!」は流行語となり、全話平均視聴率30.5%、最高視聴率37.4%という驚異的な数値を叩き出しました。
秀吉の晩年における猜疑心や老いの狂気までを演じきったその表現力は、従来の歴史劇の枠組みを根底から塗り替えました。後に2014年の大河ドラマ『軍師官兵衛』において、同一人物が18年ぶりに同じ秀吉役を演じるという異例のキャスティングが実現したことからも、竹中秀吉がいかに日本人の心に刻まれていたかが分かります。
さらに同年公開された周防正行監督の映画『Shall we ダンス?』では、普段は地味なサラリーマンでありながら、夜はかつらを被ってラテンダンスに情熱を燃やす青木富夫役を熱演。全身全霊のコミカルなダンスシーンで劇場の爆笑をさらい、第20回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞しました。同じ年に国民的英雄と愛すべき変人を同時に成立させたこの実績こそが、名実ともにトップスターの座を揺るぎないものにしたのです。