5月5日の端午の節句で行われる「菖蒲湯(しょうぶゆ)」に関して、インターネット上やSNSでは「庭に咲いている綺麗な紫の花菖蒲をお風呂に浮かべればよい」という誤解が散見されます。しかし、これは明確な間違いです。
端午の節句に用いられる本物の菖蒲は、ショウブ科ショウブ属の多年草であり、華やかな花びらは一切つけません。咲くのはガマの穂に似た地味な黄緑色の「肉穂花序(にくすいかじょ)」と呼ばれる小さな花穂のみです。菖蒲湯の主目的は観賞ではなく、葉や根茎に含まれる精油成分(アサロンやオイゲノールなど)による温浴効果と、強い芳香による「邪気払い・無病息災」の祈願にあります。
武家社会において菖蒲の葉の鋭利な形状が「刀」を連想させ、「尚武(武道を重んじること)」や「勝負」と同音に通じることから男児の健やかな成長を願う象徴となりました。美しい花を咲かせる花菖蒲の葉にはショウブ特有の強い芳香成分は含まれておらず、植物学的にも全く異なる系統である点に注意が必要です。