これほど高額な化粧まわしですが、力士本人が自腹を切って発注することはまずありません。「化粧まわしは誰が払うのか」という問いの答えは、100%外部の後援組織や個人支援者からの贈呈です。
相撲界における支援者の代名詞「タニマチ」の語源は、江戸時代末期から明治期にかけて大阪市南区谷町(現在の大阪市中央区谷町)に住んでいた相撲好きの医師が、力士たちから治療費を取らずに手厚く支援した故事に由来します。今日に至るまで、有力な支援者や後援会が関取昇進の誉れを称え、出世の門出を祝って化粧まわしを誂える慣習が受け継がれています。
贈呈に至る具体的な経緯には、主に以下の4つのパターンが存在します。
- 出身校・大学後援会:日本大学、近畿大学、日本体育大学などの相撲強豪校出身者が十両へ昇進した際、OB会や大学後援会が母校の校章やスクールカラーを入れた化粧まわしを贈る定番ルート。
- 郷土後援会・地元有志:力士の出身都道府県や市町村の後援会が、郷土の景勝地(富士山、桜島、岩木山など)や伝統文化をあしらった意匠を贈呈し、地元をあげて応援する形。
- 個人の大口後援者(タニマチ):一代で財を成した会社経営者や資産家が、私財を投じて力士個人への情熱的な支援の証として最高級の織物を仕立てるケース。
- スポンサー企業・公式パートナー:近年増加している形態。企業の宣伝告知やCSR活動の一環として、自社ロゴや主力商品、公式キャラクターをあしらった化粧まわしを提供する契約。
かつては個人のタニマチによる純粋な庇護関係が中心でしたが、2020年代以降はコンプライアンス意識の高まりとともに、透明性の高い企業スポンサードや公式後援会による共同出資へと構造がシフトしています。