『代表取締役刑事』は全45話に及ぶ名作でありながら、地上波の再放送枠でその姿を見かける機会は極めて稀です。CS放送の専門チャンネルで不定期に特集が組まれることはあるものの、なぜ地上波の白昼堂々と再放送されないのか。その背景には、単なる視聴率の問題にとどまらない、現代のテレビ業界が抱える構造的な3つの障壁が存在します。
第一の理由は、出演者の不祥事に伴う地上波コンプライアンスの厳罰化です。レギュラー出演者であった高樹沙耶の薬物報道や、セミレギュラー的に登場した酒井法子の過去の事件などは、地上波キー局における番組購入・編成基準において極めて高いハードルとなります。有料契約を前提とするCS放送や配信サービスと異なり、不特定多数の目に触れ、スポンサー企業の意向がダイレクトに反映される地上波帯枠では、リスク回避の観点から編成が見送られるのが通例です。
第二の理由は、タイアップ企業および劇用車の権利関係です。本作は前作『ゴリラ』に引き続き、三菱自動車が全面協力していました。当時発売されたばかりのフラッグシップセダン「ディアマンテ」をはじめとする劇用車群は、メーカーのプロモーションと密接に結びついていました。30年以上が経過した現在、車両のモデルサイクルは完全に終了しており、自動車メーカー側の肖像権やプロモーション契約の再許諾を巡る調整は、放送局のアーカイブ部門にとって実務上の大きな負担となります。
第三の理由は、石原プロ解散に伴う原盤権・音楽著作権の再整理です。2021年1月の石原プロモーション解散に伴い、膨大な映像ライブラリの権利はテレビ朝日や外部の版権管理会社へと移管されました。加えて、舘ひろしや渡哲也が歌唱した劇中歌・エンディングテーマ、さらには劇伴音楽の二次使用に関する権利処理には相応のコストと労力が発生します。配信や再放送による収益見込みと、これらの権利クリアランス費用を天秤にかけた結果、優先順位が下がってしまう現実が横たわっています。